低温乾燥で木の力を引き出す「温存乾燥法*」
ある大手の木材加工場での体験。
工場全体を覆う、プーンと鼻をつくタールのような匂い。高温乾燥(人工乾燥)した木材を乾燥機から取り出す様子を拝見した時のことです。
木の乾燥方法には、昔から行われてきた天然乾燥と機械を使う人工乾燥の二種類が存在します。天然乾燥は、風通しの良いところに「桟(さん)積み」した木材を自然の風と温度で乾燥させる方法。柱にするような構造材だと針葉樹で2〜3年、広葉樹だとさらに時間をかけて水分量が20〜30%になるまで乾燥させます。
一方、人工乾燥では、装置の中に入れた木材を加熱し、短時間に水分を20%以下まで落とします。80度から120度もの温度をかけて乾燥させた木材は、表面の割れは起きにくい反面、内部に微細な亀裂が生じ、細胞が酸化してしまいます。
人工乾燥が広がった背景としては、自動化されたシステムで柱や梁などの部材をあらかじめ精密に加工するプレカット材や集成材の利用が増えたことが影響していると考えられます。木の含水率を下げれば、ねじれや反りが減ってプレカットラインでの加工効率が向上し、集成材を貼り付ける際の接着性が増すなど、使い勝手が良くなります。
しかし人工乾燥材の香りを嗅いでみると、タールのような焦げた匂いがする。これは木の樹液成分が酸化され、刺激性を有する酢酸やアルデヒド類が発生するためです。そして残念ながら、人に有益な精油成分は著しく減少してしまいます。
内部に割れが生じ、焦げた匂いがする高温乾燥材
弊社が実用化に成功した独自の技術「温存乾燥法」は、35度前後の低温を保ちながら、材をじっくりと乾燥させるので、細胞組織がそのままの形で温存され、精油成分が損なわれることもありません。低温乾燥には、コストのかかる高温加熱装置は不要で、弊社では自前の木材で構築した低温乾燥窯を作業所内に設置しています。この窯の中で、木は少しずつ「汗をかくように」して乾いてゆきます。
木の瑞々しさが保たれる温存乾燥法
乾燥工程を終えた木材は、色、手触り、香り、強度、すべてが最高の状態に仕上がります。ライフスタイルデザイン住宅「花の木の家」には、この良質な温存乾燥木材が構造材や内外装の各所に惜しみなく用いられています。
温存乾燥炉
*「温存乾燥法」は株式会社バイオ・ベースが実用化に成功した独自の技術です。
森林ビルダーパネル -杉の無垢板を竹ひごで連接-
当社では、杉板の小幅板を竹ひごでつなぎ、合板と同じサイズのパネルにする加工機を導入することで、接着合板の使用枚数を削減しています。
この加工システムは「機能性に優れた無垢の野地板をパネル化できれば、作業性が上がる。施工現場で端材をより多く活用するようになれば、木材を供給する側の製材所も活性化するのではないか」との思いから開発されたものです。
杉の無垢板を竹ひごでつないだ「森林ビルダーパネル」
無垢の野地板は、湿気を適度に吸収・放出し、耐久性に優れています。湿気が溜まりやすく、四季の寒暖差にさらされる屋根の野地板には最適の素材なのです。
桧や杉の丸太から柱や桁を取った残りの製材端材で、薄い板をとり、枠材や、下地材を作る。昔からある木材の活用法です。屋根下地の野地板などが代表的な利用方法だったのですが、現代では合板に取って代わられています。
厚さ12ミリの針葉樹系合板は、一枚の重量が約12キロあります。それに対して、同サイズの杉の無垢板は約8キロです。この4キロの差は、合板を接着する化学物質の重さに相当します。たとえば、40坪の家に床・屋根と合板を使用している家では、通常100枚以上の合板が使われています。一枚あたり4キロの接着剤 ×100枚とすると、約400キロの化学物質が使用されているということになります。そして、この化学物質は何年もの間ずっと揮発し続けます。
私たちは、合板そのものを否定するつもりはありませんが、施工の効率だけを考えて、使用枚数が増加することは避けたいと考えています。この森林ビルダーパネルを随所に活用した「花の木の家」のオーナー様や施工事例をご覧いただいたお客様には、大変好評をいただいております。
温存乾燥木材で組み上げる「花の木の家」